細菌との共生

帝京大病院で、多剤耐性菌アシネトバクターにより9人以上の方が亡くなり、話題になりました。「耐性菌」というのは、抗菌剤(抗生物質)で死なない菌のことですが、「多剤耐性菌」は、いろいろな種類の抗菌剤を使っても死ななくなった菌です。アシネトバクターという菌は、、土壌、水の中、人の皮膚にふつうにいる菌で、健康な人なら、けしてこれで死ぬこともなく、それ以前に、体内で増殖もしません。以前騒がれたO157も、そんな菌でしたね。
 
ちょっと、きれいな川の水をイメージしてみて下さい。けして無菌なわけではなく、さまざまな微生物が含まれていますが、流れていれば、そのどれかが増殖することもありません。飲んでも問題ありませんね。ところが、流れを止めてしまうと、よどんでいきます。微生物が増殖を始めるのです。そうなると、もう飲めませんね。ひどいと、腐ります。
 
人間の体も同じで、体の内外に、さまざまな種類の、何兆もの菌があるわけです。大きく分けて、その人の常在菌と、よそから来て、よそへ去っていく菌です。病原菌と呼ばれるものも、実はそんな中にふつうに存在しています。が、血がさらさらと流れ、便通も良好で、細胞の代謝がうまくいっていれば、増殖しませんから、なんの問題もありません。ところが、ひとたびどこかがとどこおると、あるものがアンバランスに増殖し、発病したり、化膿したりと、問題を起こすわけです。代謝を乱す大きな原因として、1、栄養バランスの悪さ、2、けが、それから、3、抗菌剤(抗生物質)や消毒薬があります。だから、病院という環境は、実は困った菌が増殖しやすい環境です。増殖すると、抗菌剤で抑えるのですが、それにたいして耐性を持つ菌があらわれ、今度はそれが増殖。また、別の種類の抗菌剤を作る、と、いたちごっこになっています。実はもう、その競争に人間のほうが追いつかなくなり、薬メーカーは、新しい抗菌剤の開発をあきらめたそうです。
 
その辺のことは、吉川昌之介元東大医学部教授の書かれた、「細菌の逆襲」という本に詳しく書かれています。細菌学の日本の第一人者が、人類は細菌との戦いに負けた、といい、院内感染は手のほどこしようがないことを、1994年にすでに公言しているわけです。
 
ちなみに細胞矯正学を学ぶと、細胞の代謝を正常にしておけば、細菌と共生して、安心して暮らせることがわかります。多くの方に、早く教えてあげたいですね!